能楽『翁』の正体は住吉神だった!

能楽の世界で最も有名な演目といえば、『翁』であることは誰しもが認めるところです。

 

それは、「能にして能にあらず」と称されるほど別格であり、神聖な神の舞なのです。

 

ところが、ここに登場する【三人の神様】については、正体不明の【謎の老人】であるとされてきました。

なぜか? 長い間そう伝えられてきたのです。

 

ところが今回、『ウエツフミ』の記述から、それが【住吉三神】であることが判明しました。

つまり、三人の老人とは、底筒男(そこつつのお)・中筒男(なかつつのお)・表筒男(うわつつのお)の住吉三神のことだったのです。

 


ウエツフミの記述

大分県から発見された謎の古文書『ウエツフミ』によると・・・・

 

山幸彦(別名:ヒコホホデミ)と豊玉姫の夫婦が、奈良県の宇陀地方を訪れたときのこと、300歳ほどの老人が三人進み出て、「とうとうたらり」と謡いながらおめでたい舞を奉納します。

その正体を尋ねられると「我は、天皇の御代を守護する住之江の翁である」と名乗り、紫色の雲に乗って飛び去ってしまいます。

 

【もともと豊国文字で書かれていた原文】

http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=16&sno=18

 

能楽『翁』は、この逸話を忠実に再現したものと思われます。

ところがなぜか、このことは完全に忘れ去られています。

あるいは、何者かが意図的に住吉神を抹消しようとしているのでしょうか?

 


住吉神とは?

大阪の住吉大社
大阪の住吉大社 (写真はウィキペディアより)

住吉神とは一体誰なのでしょうか?

まず有名なのが大阪の住吉区にある【住吉大社】ですね。

 

ところが、徐福の子孫たちが書き記したとされる『宮下文書』では、住吉神社はもともと3か所あったらしいのです。

ひとつは現在の場所、もうひとつは高知県の岡田と呼ばれる場所(詳細不明)、そして最後が大分県の宇佐、そう現在の宇佐神宮がある場所です。

 

この三か所に、それぞれ底筒男(そこつつのお)・中筒男(なかつつのお)・表筒男(うわつつのお)の三神が祀られて、三人でガッチリ日本国の国防(特に航海の安全)をガードしていたと書かれているのです。

 

つまり住吉神とは、ずばり“日本国の守り神”なのです。

神功皇后の三韓征伐のときも、元寇のときも、この住吉神がどこからか登場して我が国の危機を救ってくれました。

つまり、敵国からみればこの住吉神を抹消してしまえば、日本国は容易に滅ぶということです。


とうとうたらり・・・・とは?

その住吉神が、山幸彦の天皇即位を祝って奉納したとされる舞、そのなかで「とうとうたらり」というセリフが何度も登場します。

 

現在伝わっている能楽『翁』でも、このセリフが忠実に再現されているのです。

【参考】https://withplace.info/archives/7668

 

ウエツフミでも、このセリフがほぼ正確に記録されています。

【原文】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=16&sno=18

能楽とは多少異なっていますが、約3000年前の出来事であるとすれば、驚異的な正確さで伝わっているということです。

 

このセリフは、一体何を意味しているのでしょうか?

 

私の見解ですが、昔の神様は意味不明のセリフを唱えることがよくあります。

その意味を考える必要はありません。

むしろ呪文だと思って口に出して発音してみてください。

もともと言葉には、【言霊(ことだま)】というパワーがあり、それを唱えることである効果が生まれると信じられていました。

つまり、これは祝詞(のりと)やお経と同じように、ありがたい功徳のある一種の【音声エネルギー】とみるのが、もっとも近いのではないでしょうか?

 


天皇家と住吉神との関係?

もうお気づきのことでしょうが、住吉神は天皇家の系譜ではありません。

山幸彦をはじめすべての天皇が実在した人物だったとしたら、その天皇が信仰していた神様が【住吉神】であるということです。

 

『ウエツフミ』には、同じく山幸彦と豊玉姫の夫婦が、新潟の佐渡で出会ったという【春日神】の逸話と現在でも春日大社に伝わる【八乙女舞】の起源に関する逸話も残されています。

【春日神】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=16&sno=6

【八乙女舞】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=16&sno=7

 

さらに、第10代ウガヤフキアエズの命が信仰していた【ヒルコ(現在の恵比寿様)】の逸話や、

【ヒルコ=恵比寿信仰】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=23&sno=15

第19代が愛媛県の大三島で出会った【オオヤマツミ】の逸話まで、数えあげたらきりがありません。

【オオヤマツミ】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=27&sno=22

 

つまり、天皇家が現在まで続いて来たのは、多くの神様に支えられていたということです。

 

ところが、明治時代になって天皇家を中心とする【国家神道】を再構築する際に、これらの神々はことごとく抹消されてしまいました。

つまり明治維新とは、天皇家が日本の国王から、世界勢力に吸収合併されていった時期という解釈もできます。

 


結び

住吉神は現在ではすっかり忘れ去られようとしています。

 

もう一度繰り返しますが、住吉神とは、ずばり“日本国の守り神”なのです。

 

私たち日本人が決して忘れてはならない大切な神様、そのことをよく理解していた観阿弥も、この『翁』という演目に最も力を注いだのでしょう。

それが能楽という形式美の極致となって、現在まで伝わっているということは、ほんとうにありがたいことです。

 

ご存知のように、能面の作者たちは「この人物はこんな顔をしていたであろう」と想像しながら、できるだけ忠実にその面影の再現に尽力しています。

つまり、現在伝わっている翁面(父尉=ちちのじょうともいう)は、住吉神が降臨したときのお顔をそっくりそのまま写したものだということです。

 

そういった目で、この『翁』をもう一度じっくりご鑑賞ください。

【動画】https://www.youtube.com/watch?v=suLWtpL-QNU