瀬織津姫が封印された理由

『六月晦大祓祝詞』から削除された衝撃の内容とは?

みなさん、本日6月30日は半年の節目にあたります。

この半年間、みなさんは“良い子”にしてましたか?

まさか、犯罪とか、犯していないでしょうね?

 

でも、ご安心ください。

そんなダメ人間たちにも、神道の世界では救済の方法があったのです。

それが、『六月晦大祓』(みなづきのつごもりのおほはらひ)。

つまり六月(水無月)のツゴモリの日(末日)に行われていた、贖罪のための儀式、その儀式のために使われた特別な祝詞(のりと)が、『六月晦大祓祝詞』だったのです。

今日も、いろんな神社でこの『祝詞(のりと)』があげられていることでしょう。

 

ちなみに、『ウエツフミ』によると「ツゴモリ日」とは「月籠り日」のことであり、月が30日間の周期を終えて、また新たなるサイクルに入る日、すなわち「新月の日」を言います。

つまり、今年(2020年)は「6月21日」にあたります。

そうです、夏至であり同時にあの日蝕が発生した21日だったのですが、まあ多少のズレは致し方無いとしましょうか。

そして、あなた自身がこの半年間に犯した「罪」と「穢れ」を浄化してくれるのが、瀬織津姫を中心とする“祓戸大神(はらえどのおおかみ)”であり、全部で四人いるので“祓戸四神”とも呼ばれています。

 

にも拘わらず、この瀬織津姫は、『古事記』にも『日本書紀』にも一切登場しませんよねえ。

それは、一体なぜなのでしょうか?

 

これから、その衝撃の理由を解き明かしてゆきますが、かなり過激で、私なりの偏向解釈が含まれていますので、ご批判は多々あろうかと思いますが、素人解釈と笑い飛ばしてお許しください。

 


まず、どこが削除されたのか?

実は、平安時代に『六月晦大祓祝詞』が『延喜式』に掲載されたときには、「何が罪にあたるのか?」という定義がはっきりと書かれていたのです。

⇒『延喜式』にある『六月晦大祓祝詞』原文は、こちら

 

ところが、その内容が過激すぎたためか? 大正3年に内務省が「訓令」で定めたもの、さらに戦後、神社本庁という民間団体が示した例文からは、この「罪の定義」がキレイに削除されることになります。

一体、彼らは何を問題視したのでしょうか?

 

⇒内務省令による『六月晦大祓祝詞』原文は、こちら

⇒神社本庁による『六月晦大祓祝詞』原文は、こちら

 


一体、何が罪にあたるのか?

まず、原文をそのまま掲載します。

これが、平安時代には存在していたのに、その後削除された「問題個所」です。

 

天津罪と 畦放 溝埋 樋放 頻蒔 串刺 生剥 逆剥 屎戸 ここだくの罪を 天津罪と法別て

国津罪と 生膚断死膚断 白人胡久美 己が母犯罪己が子犯罪 母と子と犯罪子と母と犯罪 畜犯罪 昆虫の災 高津神の災 高津鳥の災 畜仆し蟲物為罪 ここだくの罪出でむ

 

それでは、順番に解説してゆきましょう。

 

まず、罪の内容を「天津罪」と「国津罪」に分けて定義しています。

「天津罪(あまつつみ)」とは?・・・・天上界(高天之原)にいる神々が犯した罪

「国津罪(くにつつみ)」とは?・・・・地上界(現実世界)に暮らす人々が犯した罪

 

その具体的な内容は、wikipediaにも詳しく解説されていますので、下記をご覧ください。

「天つ罪・国つ罪」

 

この記述の中から、私が問題視したのは、下記の2点です。

 


国津罪の問題個所

まず、かんたんなほうから解説してゆきます。

つまり、「人が人として行ってはならない犯罪行為」が、国津罪(くにつつみ)としてズラズラと列挙されているのですが、そのなかに「白人胡久美(シラヒトコクミ)」という言葉があります。

これは、一体「どういうことを行うと犯罪になる」と伝えているのでしょうか?

 

その答えは、『ウエツフミ』にありました。

つまり、「シラヒト」とは、犯罪行為そのものではなく、犯罪行為を行った特定の部族のことだったのです。

具体的には、神武天皇(ヒダカサヌ)の時代に、大和のナガスネヒコをそそのかして、天皇家の転覆を図ろうとした一族のことを「シラヒト」と呼んでいます。

⇒ちなみに、ナガスネヒコとは『ウエツフミ』によれば、東北の亘理(わたり)を本拠地としていた豪族のこと。『富家伝承』によれば、クナト神(フナト神)やアラハバキ神を信仰していた本物の出雲族であり縄文人のこと。

 

つまり、現在の刑法では内乱罪(77条)や、外患援助罪(82条)として規定されている【 国家転覆を図る罪】、これを行った人のことをシラヒトと呼んでいるのです。

 

ただし、具体的に何人が?あるいは何族が?「シラヒト」にあたるのかは、学説が分かれています。

「新羅人のことをシラヒトという」と解釈する先生も居れば、「いやいやシラヒトとは五色人のうちの白色人種のことである」と解釈する先生も居ます。

 

「シラヒト」のことを補足的に説明しているのが「胡久美(コクミ)」なのですが、これが一体何人・何族にあたるのかは、現在ではほとんど手掛かりがありません。

唯一、シラヒトとコクミが具体的な人物として登場するのが『ホツマツタエ』なのですが、私は専門家ではありませんので、ここはサラリとスルーします。

⇒ちなみに、『ホツマツタエ』による解説は、こちら

 

一方で、コクミのことを「瘤(コブ)」や「くる病」のことだと解釈している先生も居ますが、なぜコブが出来ただけで犯罪にあたるのでしょうか?

 


天津罪とはスサノオの行為そのものである

さらに問題なのは「天津罪(あまつつみ)」のほうです。

もういちど、「何が天津罪にあたるのか?」を順番に読んでみてください。

「天つ罪・国つ罪」 

 

そうです、これらの行為は全て、スサノオの命が高天之原で行った乱暴行為にあたります。

ということは、『六月晦大祓祝詞』とは、実名こそ伏せられていますが、暗にスサノオだけを集中的に攻撃しているともとれるのです。

 

普通のセンスでは、「天津罪を犯したスサノオは、悪神の象徴であり、本来は“あってはならない神様”だ」ということになりますが、逆に、「神々の行った罪を一身に背負って高天之原から消えていったスサノオこそ、神界のメシア(救世主)である」という解釈も成り立ちます。

 

そして、このスサノオの犯した罪を、贖罪(許して帳消しに)してくれるのが、瀬織津姫ら“祓戸四神”だったのです。

もっと端的に表現すれば、スサノオと瀬織津姫は『因縁のライバル』であり、あるいは『天敵同士』だということになります。

 

「えーっ、それじゃあ、瀬織津姫を封印すれば、悪神であるスサノオが復活するんじゃないの?」

そう、考えたあなた、いいセンスしてますよ。

その通りです。

 

大正時代の内務省や、戦後の神社本庁が「スサノオ信仰である」と断定する証拠はありませんが、徐々にスサノオを復活させようとする動きが主流になって来たことは否定できません。

 

例えば、戦時中には世の中に良い神様しか居なかったら、戦争なんかできませんからね!

さらに、本来「祇園社」に祀られていた薬師如来と山王神を、「八坂神社」に改め、そのご祀神を牛頭大王ことスサノオであると解釈し始めたのは、神社本庁ですよね。

 

実際に、スサノオを天照大神の上位神として位置付け、熱心に信仰している人たちも居ます。

それは、藤原氏の一族とされる『九鬼(くかみ)家』。

彼らが信仰していたのが『宇志採羅根間大神』と呼ばれる祟り神であり、そのことを伝えたのが『九鬼文書』、そしてその悪神を『艮の金神』として現代に復活させたのが、出口王仁三郎の大本教だという流れになります。

⇒このことは、雑誌『ムー』2016年1月号(No.422)に詳しく解説されていますので、興味のある方はバックナンバーからどうぞ。

 

⇒大本教自身による『艮の金神』の解説は、こちら

 

彼ら「スサノオ信者」からしてみれば、せっかくの祟り神・スサノオが(世直しのため?)大暴れするのを、半年ごとに洪水を起こして浄化・封印してしまう瀬織津姫こそ、にくきカタキということになりませんか?

だから現代では「瀬織津姫とはヤソマガツ神のことである」(1)とか、「男神・アマテラスの奥方様が瀬織津姫だ」とか、まことしやかなフェイク・ニュースが、チマタに流通しているのです。

(1)この説を唱えているのは肥後の細川氏など。だから細川家の家紋は九曜であり、大本教と同じ。

 

さらにさらに、この解釈の延長線上にあるのは、「スサノオという祟り神を信仰する白人胡久美(シラヒトコクミ)と呼ばれた人たちが、国家を転覆させようと反逆を起こし、それを平定したのが瀬織津姫ら四神だったのではないのか?」という新説も生まれます。

 

そういえば、世界に目を転じてみても『悪魔崇拝者』という人たちが居ることも事実のようです。

ご存知のとおり「陰謀論者」と呼ばれる人たちがそう伝えています。

その影響力が、日本にだけは全く及ばなかったと、誰が断定できるのでしょうか?

 

まあ、これくらいにしておきましょう。

しょせん信仰の世界とは「信じるかどうかはアナタ次第」ということなのですから。

 

いずれにせよ、私たち日本人は、6月30日と12月31日になったら、この『六月晦大祓祝詞』に思いをいたして、この半年間、自分の心に罪や穢れが無かったかどうか?を真摯に反省すべき「節目の一日」だということでしょうね。