瀬織津姫に関する記述を発見

ウエツフミにはそのご由緒が書かれていた!

「古事記」「日本書記」が無視してしまった瀬織津姫。

やはり、「ウエツフミ」だけがその誕生秘話をしっかりと伝えていました。

 

---まず思い出してください。---

イザナギとイザナミが神生みをしているとき、カグツチという火山の神様を生んだばっかりに、イザナミはホトに大やけどをして亡くなってしまいます。

そして、その苦しむ姿を「7夜8日のあいだ絶対に見ないで!」と夫に伝えるのですが、夫のイザナギが約束を破ったので、イザナミはヨモツヒラサカ(黄泉の国)へと旅立ちます。

 

---ここからが、「ウエツフミ」だけのユニークな記述---

ところが、ヨモツヒラサカに向かったイザナミは、いったん思い返して帰って来るのです。

それは、「私の夫であるイザナギの命が、現世を統治するのに(邪魔になる)【心の悪い子供】を生んだまま置いてきてしまったから・・・・」

という理由だったのです。

【原文】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=1&sno=5

 

ここにいう、【心の悪い子供】とは、【ヤソマガツヒ】のこと。

 

---でも、鋭い人はある矛盾に気づきませんか?---

【ヤソマガツヒ】は、「イザナミがヨモツヒラサカという穢れた場所に行ったので、その穢れから生じた神様だ」と説明されているからです。

この時点では、まだイザナミはヨモツヒラサカには行ってません。

まあこのくらいの矛盾は無視することにしましょう。

 

そこでイザナミは、このヤソマガツヒに対抗するため「正義の味方」を産み残します。

それが祝詞(のりと)では「祓戸四神」と呼ばれている4柱の神々のこと。

 

具体的には・・・・

ミズマリ姫の神

ニウヅ姫の神

アメノヨサツラとクニノヨサツラの夫婦神

カワナギとカワナミの夫婦神

【原文】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=1&sno=5

 

もうお気づきのように、「祓戸四神」とは名前が違っていますよねえ。

だから、誰も気づかなかったんでしょうね。

 

---ではここに、もう一度私流の解釈を加えます。---

【ミズマリ姫の神】とは?

水を「まる」とは「放出する」の意味。

だからこの神様が【瀬織津姫】ではないでしょうか?

なお、「〇〇をまる」は、現在でも大分県で使われている(やや下品な)方言です。

例えば「シッコまっちきなあ」という風に使われます。

つまり、「ミズマリ姫」とは「瀬織津姫」の大分県特有の呼び方ではないでしょうか?

さらに、大野川中流の「沈堕の滝」には、瀬織津姫を連想させる民話が伝わっていることは以前にもご紹介しましたので、興味のある方は、こちらから。

 

【ニウヅ姫の神】とは?

丹生津とは大分市の丹生川河口に実在する場所で、昔から天然の良港とされていました。

丹生にある港だから丹生津。

その沖合には、神話にもたびたび登場する「速吸の瀬戸」という、強い潮の流れがあります。

この激流そのものが穢れを一気に沖合まで押し流してくれる【根國底國に坐す速佐須良比賣】のことでしょう。

ちなみに、近くの佐賀関には「早吸日女神社」もありますが、この【早吸日女】と【速佐須良比賣】とは同一神ではないでしょうか?

さらに興味深いことに、「早吸日女神社」には【ヤソマガツヒ】まで祀られているのですが、悪神と良神とを一緒に祀るというのは、私には理解できないけれど、それなりの理由があるのでしょうね?

(ここは江戸時代は熊本の細川氏の領地だったので、彼らが悪魔信仰を持ち込んだのかもしれません?)

さらに、のちに秦氏がやって来て丹生地区に「丹生神社」を建てて「水銀の神様」あるいは「ミズハノメ(湧き水の神様)」として祀ってしまったので、大混乱しているようです。

 

【アメノヨサツラとクニノヨサツラの夫婦神】とは?

消去法で、この神様が【速開都比売】のことでしょうか?

海の「八百会」に鎮座する神様だと「祝詞」は伝えていますが、「会」は「江」のことで数々の入り江に鎮座する神様という意味。

 

【カワナギとカワナミの夫婦神】とは?

川を「なぐ」とは穏やかにすること、また「なみ」とは波立てること。

どちらも風によって引き起こされます。

だから風を支配する神様【気吹戸主】のことではないでしょうか?

もともとは「川風」という狭い権限に限定された神様だったのに、いつのまにか風全般を支配する上位の神様と勘違いされたのではないでしょうか?

ちなみに、風の神様にはシナヅトベ(シナツヒコ)という別の神様も居ます。

この神様が川風を発生させて、穢れをさらに下流へと押し流してくれます。

 


以上、『ウエツフミ』に書かれた4柱の神様とは、『祓戸四神』の大分方言バージョンではないかというのが、私の結論です。

 

さらに、これらの4柱の神々を総称して「直毘神(なおびのかみ)」と呼ばれたのではないでしょうか?

のちに藤原氏が祝詞に採用してからは、都会風のオシャレな名前に変えられて「祓戸四神」になったのでしょう。

 

その役割は、まるで「戦隊ヒーロー」であり、ヤソマガツヒがやらかしてしまった様々な穢れ(事件事故とか、争いとか、病気とか、苦しみとか、絶望とか、悲しみとかもろもろ)を、一気に押し流して浄化してくれる神様なのですが、残念ながらそれが実行されるのは、毎年6月30日の一日だけだと決められていました。

 

だから、「ミナツキ(6月)のツゴモリ(30日)の大祓え」なのですが、この祝詞が年末の12月31日にも上げられるようになり、効果てき面だったので、現在では「万能の魔除け呪文」として活用されているのです。

【原文】https://www.ne.jp/asahi/poko/apple/ooharae.html

 

それにしても、「イザナミ様ありがとうございます」ですよねえ。

ちゃんと自らの失敗作を帳消しにする方法まで用意してから、あの世へと旅立ってくれたのですから。

 

なお、全国のイザナミが祀られている神社に参拝される皆さんにお知らせです。

イザナミの命はお花が大好きだったそうで、参拝する際には「季節のお花」を奉納するとよいと、『日本書紀』にもあります。