そもそも、「桃の節句」という行事を定めたのは、初代・ウガヤフキアエズ天皇でした。
「ウエツフミ」によると、天皇は即位するとすぐに、月ごとの年中行事を定めます。
『3月(いやよ月)の3日には、桃の花と桜の花の門松を玄関に立てて、母子草の餅で祭りを祝うこと』というお触れを出します。
そして、この行事は平安時代まで確実に引き継がれました。
【原文】http://www.coara.or.jp/~fukura/uetufumidata/uetudata.php?tno=17&sno=10
平安時代に起きたある事件とは?
ところが、ここに事件が発生します。
平安時代の850年に、
庶民の間で「今年は母子草の餅を作るのを自粛しよう(天皇の母子が病気がちなので)」というウワサが広がります。
学識者はこれを非難しましたが、案の定、
3月に仁明天皇が、5月にはその母親・嵯峨太后が相次いで崩御し、ウワサどおりとなってしまいました。
これは「文徳実録」という文献に書かれていますが、
その作者は
「これは天が庶民の口を借りてウワサを流したものであろう」と結んでいます。
これ以降、文献からは「母子草」という名称が消えてしまいます。
ただし、この「文徳実録」にも「桃の節句」と「母子草で作られたお餅」との関係が書かれていますが、ウガヤフキアエズ天皇が定めたことは既に忘れられていたようです。
「この間、田野に草あり、俗に名付けて母子草といふ。
2月初生じ、茎葉白く脆し。
毎年3月3日にあたり、婦女これを採り、蒸し搗きて以って餅になす。
伝へて歳時となす。」
さらに過激なもうひとつの別伝
ところが、この逸話には、もっと深い「裏話」が存在するのです。
それを説明するためには、まず当時の社会情勢を理解しておく必要がありますので、しばらく脱線しますが、最後までおつきあいください。
実は、このころ天皇家は「中国化政策」を積極的に推進していました。
そもそも、平安京がなぜ中国の長安を模して碁盤の目状に造られたのか?
なぜ桓武天皇が、中国風の服装をしているのか?⇒写真参照
その理由を考えれば、当時の政策がどこを向いていたのかが分かるはずです。
そしてここに、中国化政策の推進役であるヒーローが登場します。
それが、菅原道真なのでした。
菅原道真の評価
菅原道真の評価は真っ二つに分かれています。
(1)私が子供の頃に教わったのは、「遣唐使を停止して、わが国独自の国風文化を確立した大功労者である」とされていました。
だから天神様として神様になったのだと・・・・
(2)ところが、最近は全く逆の評価が主流となりつつあります。
つまり、菅原道真こそ「中国風文化の推進役」であったと・・・・
以前、私も仕事でいろいろと調べてみました。
「菅家文書」などの原典も読んでみました。
そして、私なりに得られた結論とは、やはり(2)の説が正しいようです。
具体的には、菅原道真が、宮中の行事を全て「中国風」に改めようとしたことです。
当時、中国で行われていた「元服の儀」、これを宮中で1月15日に行うことを提案したのが、菅原道真なのです。
現在の「成人の日」のルーツですよね。
これに対して異議を唱えたのが、代々宮中の行事を運営管理してきた藤原一族です。
ここに「菅原 vs 藤原抗争」が勃発し、これに敗れた菅原道真が左遷されて、大宰府に都落ちすることになったのです。
さてさて、何が言いたいのかというと、冒頭の仁明天皇・嵯峨太后の「母子同時崩御事件」が起こったのが、菅原道真が5歳の頃でした。
つまり、世の中には「中国化政策」が蔓延し始め、賛否両論が飛び交うという、誠に不穏な状況にあったということです。
当然、これに対して庶民からも不満の声が出ていましたが、日本人独特の気質として、表立って反対を唱える人は少なく、陰でひっそりと以心伝心が行われていたのです。
そして、起きたのが「母子草事件」でした。
この事件の真相とは?
母子草の別名は「ごぎょう」ですよね。
そして、それは中国文化の中心コンセプトである「五行思想」にも通じます。
だから庶民たちは、「この五行と、母子をすり潰して、餅にして食ってしまうことで、中国文化を撃退しよう!」というキャンペーンを始めたのです。
つまり、日本古来の伝統行事にかこつけて、呪詛を行ったと取られても仕方の無い事件だったのです。
これに対して怒ったのが天皇家であり、それ以降「母子草入りの餅」の製造を禁止します。
だから、おひな祭りのお供えが「よもぎ餅」に変えられたのです。
もちろん、これは根拠の無い言い伝えにすぎませんが・・・・
さてさて、どちらが本当の説やら、今となっては謎のままですが、この逸話は貴重な教訓を現在に残してくれています。
それは、中国人が暴走し始めたら「五行入りの餅」にして、食ってしまえば良いということです。
もちろん、そのときは、ゴギョウをよくすり潰すことをお忘れなく。
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